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ウェブアクセシビリティを分かりやすく解説!
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コンサルティングの現場では「最近よく耳にするウェブアクセシビリティとは?」「義務化っていつから?」という質問を多くいただきます。そこで今回は、アクセシビリティ診断やアクセシビリティ対応ウェブサイトの構築実績から、ウェブアクセシビリティについて分かりやすく解説します。
目次
ウェブアクセシビリティとは?
「ウェブアクセシビリティ」とは「年齢的・身体的条件に限定されずウェブにある情報にアクセスし利用できること」と定義されています。簡単に言えば、「みんなが使えるもの」と言ってもいいでしょう。
この背景には、ウェブの普及が進み、万人に対して情報を提供するための媒体として定着したことが挙げられます。ですから、あるウェブサイトにアクセスした際に、そのすべての人が平等に使用できるようにデザインされたものではなければならない。という発想から生まれた考え方です。
たとえば、画像の指し示す情報に代替テキストを付与することや、文字と背景のコントラスト比を保つことは「ウェブアクセシビリティ対応の基本的に達成すべきこと(必須項目)」として指定されています。
これらの項目は、主に視覚的障がいを持つ方を対象とした例ですが、ウェブアクセシビリティの対象者は障がいを持つ方だけでなく、高齢者や国外からのサイト訪問者なども含まれるため、多角的な対応項目が含まれています。
ウェブアクセシビリティの重要性
先にも述べたように、今やウェブサイトはインターネットに繋がっていれば世界中のだれもが閲覧したり利用したりすることが可能な媒体です。
ウェブアクセシビリティの重要性は、2021年に発足したデジタル庁がその準備段階でウェブアクセシビリティ専門家チームを組成するほどです。また、米国においては、企業のウェブサイトがウェブアクセシビリティを十分に確保していなかったことが原因で起きた起訴が年々増加し、2020年では3,500件を超え、2021年現在ではすでに4,000件を超えている(※1)というくらい重要な課題となっています。
(※1) UsableNet. 2021 MID YEAR REPORT ADA DIGITAL ACCESSIBILITY LAWSUITS. https://f.hubspotusercontent30.net/hubfs/3280432/Remediated%20-%202021_MidYear_UsableNet_WebAccessibilityLawsuit_Report_FINAL_06292021%20(5).pdf
ウェブアクセシビリティの対応項目
では、ウェブアクセシビリティの対応項目をもうすこし細かく見ていきましょう。
日本でのウェブアクセシビリティは、JIS X 8341-3:2016という規格がベースとなっています。これはあくまでも日本における規格であって世界規模の規格はまた別に存在します。
それが「WCAG」と呼ばれるものです。20年以上前に作られたもので現在にいたるまで数回アップデートされています。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会によると
「『JIS X 8341-3:2016』は、高齢者や障害のある人を含む全ての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく、ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている。」
と定義されています。
(※出典:https://waic.jp/docs/jis2016/understanding/201604/ )
具体的な項目としては、
・知覚可能の原則
・操作可能の原則
・理解可能の原則
・堅ろう(牢)
と幅広く、全部で61の達成基準項目から成り立っています。
ウェブアクセシビリティのレベルって?(レベルAとレベルAAの違いとは)
ウェブアクセシビリティのレベルについてご説明しましょう。
JIS X 8341-3: 2016には、「レベルA」、「レベルAA」、「レベルAAA」の3段階に分けられたレベルが設けられています。レベル毎に、満たすべき達成基準が定められており、達成レベルの考え方は、一つの項目に対して達成度合いが「A〜AAA」と判定されるように決められているのではなく、各レベル毎に達成するべき項目が定められていて、その項目を満たした場合にサイト全体としてそのレベルを獲得できるという仕組みです。
レベルの違いについては、下記の様になっています。
【ウェブアクセシビリティの適合レベル】
・レベル A (25の達成基準):アクセシビリティ確保に最低限必要なレベル
・レベルAA(13の達成基準):諸外国でも公的機関に求められるレベル
・レベルAAA(23の達成基準):レベル AAAを目標とすることは推奨しない
(※参考:JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA):https://waic.jp/files/cheatsheet/waic_jis-x-8341-3_cheatsheet_201812.pdf )
ウェブアクセシビリティに対応するメリット
ではウェブアクセシビリティに対応した場合のメリットについて見ていきましょう。メリットとして大きく下記の3つが挙げられます。
- 1. 離脱していた層(見込み客)の獲得
- 2. SEO対策
- 3. コンプライアンス遵守・SDGsへの対応によるブランドイメージの向上
1. 離脱していた層(見込み客)の獲得
これまで、あるウェブサイトまでは到達したものの、その情報が読みづらい、操作しづらい、遅いなどの理由によりそのサイトをもう訪問しなくなった経験はありませんか?それこそが離脱していた層(見込み客)です。
ウェブアクセシビリティに対応したサイトにすることで、それまで離脱していった層の獲得につながるのです。
2. GoogleのSEO対策
Google社の「検索品質評価ガイドライン」に「使いやすさ」に関する項目があることから、ウェブアクセシビリティ対応がSEO対策としても効果が期待できます。
つまり、検索上位にヒットする可能性が高まるので、サイトを訪問する母数が増えることに繋がり新規顧客獲得が見込めます。
3. コンプライアンス遵守・SDGsへの対応によるブランドイメージの向上
ウェブアクセシビリティへの対応は、SDGsの目標の一つ「10. 人や国の不平等をなくそう」を達成するための手段の一つとなります。他社に先んじて対応をすることで、CSR(企業の社会的責任)やSDGsへのメッセージにも繋がり、企業ブランディングの向上へと繋がります。
ウェブアクセシビリティ対応が義務だといわれる理由
2021年に日本で「障害者差別解消法」という法律の改正が行われました。
これにより、障がいを持つ人とそうでない人とが差を感じないよう、さまざまなコンテンツや生活環境などの、過度な負担のない範囲での改善「合理的配慮」を求められるようになります。
それまでは国や自治体には義務で、民間企業に対しては「できれば合理的配慮してほしいな」という努力義務あつかいでした。しかし、改正により民間企業も合理的配慮が義務として設定されたのです。
コンプライアンス遵守・SDGsへの対応によるブランドイメージの向上
改正により合理的配慮が義務として設定されましたが、ここでいう「合理的配慮」にウェブアクセシビリティが含まれるかどうかはまた別の問題です。
個々人の解釈に委ねられるところが大きいため、サイトによっては「ウェブアクセシビリティの義務化」と表現していることがあるのだと考えられます。
実際、ウェブアクセシビリティそのものを義務とする法的な文面はありません。
また、ウェブアクセシビリティが「環境の整備」に含まれるという考えもあります。
「環境の整備」とは、合理的配慮のために必要な施設や設備などを準備しておくこと。
環境の整備は努力義務であるため、もしウェブアクセシビリティがこれに含まれるのであれば、法的な拘束力はなく、罰則も特にありません。
コンプライアンス遵守・SDGsへの対応によるブランドイメージの向上
ウェブアクセシビリティの対応が義務なのか、努力義務なのか。
それは実際解釈によって異なるところです。
ただ、もし自サイトが合理的配慮を求められ、適切な対応が必要となった場合、ウェブアクセシビリティの事前対応が担保となるでしょう。
【まとめ】早めの対応がおすすめ!
施工時期が2021年6月4日から3年以内、、と、とても曖昧ではありますが、まずは、自社のサイトがどの程度ウェブアクセシビリティに対応しているのかを知るというのはすぐにでも始めたいところです。
アクセシビリティに対応するには、改定で済むのか、ゼロからサイトを構築したほうがいいのか、またその費用や構築にかかる時間は?と考えたらもちろん早めにスタートして良いに越したことはありません。
特に海外向けに事業を展開していたり、すでに英語サイトを運営していたりする場合はなおさらです。メリットの項でもご説明したとおり、SEOやマーケティング効果が他社よりも期待できるのは、他社がまだ手を付けていない時期だということは容易に考えつきます。
アルサーガパートナーズでは、ウェブアクセシビリティの対応診断サービスやウェブアクセシビリティ対応ウェブサイトの構築も行っております。まずはお気軽にウェブ診断してみませんか?
詳細とお問い合わせはこちらからどうぞ!
ウェブアクセシビリティ 診断サービスの詳細はこちらをご覧ください。
URL:https://fvs-net.co.jp/service/web-accessibility/
アルサーガパートナーズ株式会社
フロンティアビジョン本部
Emal:web-accessibility@arsaga.jp
電話:096-283-2600
参考
・JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン: https://waic.jp/docs/jis2016/test-guidelines/201604/gcl_example.html
・JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA): https://waic.jp/files/cheatsheet/waic_jis-x-8341-3_cheatsheet_201812.pdf
(文=海藤)