イベントソーシング
読み方: イベントソーシング
イベントソーシングとは
イベントソーシング(Event Sourcing)は、アプリケーション開発においてシステムの状態変更をイベントとして記録し、そのイベントの連続(イベントストリーム)を再生して現在の状態を再構築する概念です。特に分散システムやマイクロサービスでのデータの整合性を保つのに有効です。
リアルタイム処理に向いており、全てのイベントを記録することで監査やデバッグが容易になります。通常のCRUD操作の代わりに、すべての状態変更をイベントとして管理し、システムの信頼性と柔軟性を高めます。
対立概念であるステートソーシングとは
ステートソーシング(State Sourcing)は、状態をターゲットにした概念で、アプリケーションの現在の状態を直接保存し、変更が生じた時にその状態を更新します。これは一般的なCRUD(Create, Read, Update, Delete)操作に基づいており、データベースやストレージに最新の状態のみを保存します。
ステートソーシングは実装がシンプルで、データの一貫性と即時性を確保しやすいという利点があります。しかし、変更履歴が保持されないため、過去の状態の追跡や監査、デバッグが困難です。
イベントソーシングと対比されるステートソーシングは、シンプルなアプリケーションや履歴管理が不要なシステムに適しています。リソースの節約や管理の容易さを求める場合に有効です。
イベントソーシングのメリットとデメリット
■メリット
・完全な履歴の保持
イベントソーシングでは、すべての状態変更がイベントとして記録されます。これにより、システムの状態がどのように変化してきたかの完全な履歴が保持されます。過去の状態をトレースし、監査やデバッグを行う際に非常に役立ちます。
・スケーラビリティと柔軟性
非同期でイベントを処理するため、システム全体のスケーラビリティが向上します。また、新しい要件やビジネスルールの追加が比較的簡単なため、システムの柔軟性も高まります。
・信頼性と復元力
イベントの不変性と連続性により、システムの信頼性が向上します。また、イベントの再生を通じてシステムの状態を復元することが可能であり、障害発生時のデータ復旧やリカバリーが容易です。
■デメリット
・複雑な実装
イベントソーシングの実装は、ステートソーシングよりも複雑です。イベントの設計、保存、再生、整合性の管理など、さまざまな側面が慎重に考慮される必要があります。これにより、開発やメンテナンスのコストが増加する可能性があります。
・データの冗長性とストレージの使用量
すべての状態変更がイベントとして記録されるため、データの冗長性やストレージの使用量が増加します。大量のイベントが生成される場合、ストレージコストやパフォーマンスへの影響が考えられます。
・一貫性と整合性の管理
イベントソーシングでは、イベントの順序や整合性を管理する必要があります。複数のイベントストリームや分散システムの場合、イベントの処理順序やトランザクションの整合性を確保することが課題となります。
現場の声
イベントソーシングでは、すべてのデータ変更がイベントとして記録されるため、詳細な業務分析が可能となります。この分析は業務改善や顧客の潜在的なニーズの掘り起こしに役立ちます。しかし、実装や運用には高いコストがかかるため、導入前にビジネスニーズやシステム要件を考慮し、本当に必要なのかどうか慎重に検討すべきでしょう。
<執筆・監修>
アルサーガパートナーズ株式会社 DX技術用語集制作チーム
(2024年5月時点)