DXブログ
政府・行政によるDX事例を紹介
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世界各国で、デジタルを活用して生活を便利に、豊かにするためにデジタル・ガバメントが志向されています。既存の手続きをIT化するだけにとどまらず、行政を変革し、生活者との関係性や暮らしの在り方を変えようとする大きなスケールの取り組みも推進されています。
政府や地方自治体の利便性・効率性をテクノロジーの力で高める動きは、政府(Government)と技術(Technology)を組み合わせた造語「GovTech(ガブテック)」と呼ばれています。関連して、地域の課題をテクノロジーで解決するLocalTech、市民自身が技術を活用して行政サービスの問題や地域課題に取り組むCivic Techという言葉もあります。
この記事では、海外と国内の事例から、行政主導のDXについて紹介します。
目次
投票のオンライン化
デジタル化を国策として進め、世界でも最も行政DXが進んでいるエストニアでは、電子内閣システム「e-Cabinet」、電子税務申告システム「e-Tax」、起業の簡便化を実現するシステム「e-Business」など、政府のサービスのほぼ全てが電子化されています。また、15歳以上の国民に電子IDカードの所持を義務付けることで投票のオンライン化を実現する「i-Voting」というシステムも普及しています。
エストニアでは、2002年にインターネット投票を実施できるよう地方議会選挙法が改正され、2005年に初めてのインターネット投票を実施。以来、2019年までに10回の選挙が行われました。インターネット投票率は回数を重ねるごとに上昇し、2019年3月に実施されたエストニア議会選挙では、投票の半数近くがオンラインで行なわれました。
(参考:未来型国家エストニアに見るデジタルソサエティ-JEEADiS)
日本でも、若年層の投票率向上とコロナ禍での投票環境整備のため、オンライン投票に向けた議論が進んでいます。内閣府が進める国家戦略特区制度「スーパーシティ構想」の候補地となったつくば市では、市と筑波大学と茗溪学園が連携して、茗溪学園の生徒会長をスマートフォンからの投票で決めるオンライン生徒会選挙が行われました。
これは2024年に行われる予定のつくば市長、市議選挙でネット投票を実現させることを想定したインターネット投票の実証実験という位置づけで、海外留学生も含めた1500名超を対象と、立会演説会から投票までの課題について検証されました。
国会でも、2025年の参院選でネット投票を実施するための関連法案が継続審議となっています。
(参考:令和3年度 茗溪学園生徒会選挙にて 全国初の「オンライン投票」を導入実施します)
コロナ禍における行政主導のデジタル活用
台湾は、コロナ禍において驚くべきスピードでデジタルを導入・活用し、世界の新型コロナ対策における「優等生」として知られることとなりました。
例えば、2020年1月20日に第1号のCOVID-19感染者が発見された後、わずか約2週間後にマスクの公平な分配を実現する施策が、IT大臣オードリー・タン氏のリーダーシップにより実現しています。これは健康保険カードのICチップを読み取ることでこれまでのマスク購入履歴が確認可能で、1週間で購入できる枚数(大人3枚、子ども5枚)を超えている場合は購入できないという仕組みで、仕事でマスクを買いに行けない人もアプリ上から予約が可能とするものでした。
また、政府からCSVで30秒ごとに供給されるマスクの在庫データを供給しました。これを活用し、民間企業が台湾内で全6,000カ所以上の販売拠点でのマスクの在庫が3分ごとに自動更新されるマップアプリを開発しました。
この動きの基盤となるのが、台湾独自の「健保医療情報クラウドシステム(NHI MediCloud System)」です。台湾では、医薬品の処方や検査、薬物アレルギーなどの患者のデータがICチップ埋め込み型の健康保険証が2004年ごろに全面導入され、ほぼ全ての医療機関で活用されています。
健保医療情報クラウドシステムを活用することで、有事の際のパニックを回避し、買占めの抑制につながったというわけです。
これらの取り組みの成果もあり、新型コロナウイルス感染症の域内抑え込みが効果を発揮し、経済活動を押し上げました。行政院の発表では2020年のGDPは前年と比べて速報値で2.98%増加するなど、コロナ禍において世界でも数少ないプラス成長を記録した事例となりました。
(参考:台湾の経済成長率、約30年ぶりに中国超え- NNA ASIA・台湾・マクロ・統計・その他経済)
日本では、コロナ禍を契機に、病院・病床・医療スタッフの状況、医療機器・資材の確保状況等を一元的に把握・支援する「G-MIS(新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム)」、保健所等の業務負担軽減及び保健所・都道府県・医療機関等をはじめとした関係者間の情報共有・把握の迅速化を図る「HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)」、新型コロナウイルス感染症の感染者と接触した可能性について、通知を受け取れる「COCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)」を開発し、デジタル化を推し進めました。
マイナンバーカード
国際デジタル競争力ランキングで日本は28位で、他の先進国よりも遅れをとっていると言われていますが、国を挙げてさまざまな取り組みが推進され、徐々にDXが普及しています。
その一つが、マイナンバーカードによる本人認証と、ITサービスを組み合わせた手続きのオンライン化です。
マイナンバーカードは、個人番号を証明する書類や本人確認の際の公的な本人確認書類として利用でき、また、様々な行政サービスを受けることができるようになるICカードです。普及率は2022年4月時点で42.4%に達しています。健康保険証の代わりとして使えたり、確定申告をオンラインで実施できたりなど、利用の幅が広がっています。
マイナンバーカードによる確定申告が導入される以前から、オンラインで納税申告する仕組みがありました。しかし利用にはカードリーダーが必要であり、「このためだけにカードリーダーを買うのはちょっと…」という理由からは敬遠されることもありました。
令和3年度の確定申告から、二次元バーコードをスマートフォン端末で読み取ることで、マイナンバーカード方式によるe-Tax送信ができるようになりました。
スマートフォン、マイナンバーカード、クラウド会計ソフトを組み合わせることで、申告にまつわる作業がすべてオンライン上で完結できます。
筆者自身も、これまではクラウド会計ソフトで申告書を作成し、税務署に直接提出したり、郵送したりしていましたが、令和3年分はオンラインで作業を完結することができ、非常に便利になっていることを実感しています。
アルサーガの行政DX支援事例
アルサーガパートナーズでは、「中小企業119」など、さまざまな行政DXプロジェクトのパートナーとして支援しています。
中小企業119
中小企業庁が運営する「中小企業119(URL:https://chusho119.go.jp/)」は、様々な経営課題を抱える中小企業・小規模事業者等に対し、それぞれの課題に対応した専門家を3回まで無料で派遣することで、その解決を支援する事業です。
具体的には、中小企業・小規模事業者等は、自助努力だけでは解決が困難な経営課題(販路拡大、ITを活用した経営力強化、新事業の創出等)について地域の支援機関(よろず支援拠点や商工会・商工会議所、都道府県等中小企業支援センター、金融機関等)に相談を行います。相談を受けた支援機関は、自機関では解決困難な経営課題に対し、それぞれの経営課題に対応した専門家を選定し、中小企業・小規模事業者等の元への派遣を行います。
「中小企業119」は、中小企業・小規模事業者等と深い知見を持つ専門家の橋渡しを行い、新たなビジネス創造や経営改革等をサポートします。
本仕組みの実現にあたり、アルサーガパートナーズは、株式会社サイシードの企画のもと、システム開発会社として参画致しました。
中小企業119の事例はこちら
https://www.arsaga.jp/work/chusho119/
アルサーガパートナーズでは、サービスやシステムの開発・運用だけでなく、DXを活用した戦略コンサルティングとして、「DX新規事業コンサルティング」、「DXコンサルティング」、「業務コンサルティング」を提供しています。ご相談・お問い合わせはメールフォーム https://www.arsaga.jp/contact/ からお気軽にどうぞ。
(文=松村)