プレスリリース
【イベントレポート】鈴木寛教授×矢倉大夢氏×代表小俣による、 生成AIの未来を考える メディア向けセミナーを開催
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〜各分野の生成AI活用の最新トレンドを解説〜
企業のDXを促進するアルサーガパートナーズ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 CEO/CTO:小俣泰明、以下「アルサーガパートナーズ」)は、2024年6月20日(木)に本社オフィスにて、メディア向けセミナー「生成AIとつくる新時代を考える」を開催しました。東京大学 公共政策大学院 教授 兼 慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 教授の鈴木寛教授と、ドイツ・マックスプランク人間開発研究所 研究員の矢倉大夢氏をお招きし、弊社代表の小俣とそれぞれの観点から生成AIの現状と未来を語りました。
目次
登壇者紹介
鈴木 寛(すずき かん)
1986年 東京大学法学部卒、通商産業省入省
1995年 松下村塾に感銘を受け「すずかんゼミ」を立ち上げ現在までにIT、医療、教育、中央・地方官庁など様々な分野で活躍中の人材を数多く輩出
2001年 参議院議員に当選(参議院議員12年間)文部科学副大臣(二期)、文部科学大臣補佐官(四期)などを歴任。教育、医療、スポーツ、文化、科学技術イノベーションに関する政策づくりや各種プロデュースを中心に活動。
2014年 東大・慶大教授に就任(日本初の国立・私立大クロ スアポイントメント。2023年まで)
2021年 ウェルビーイング学会副代表理事就任
2024年 一社Generative AI Japan 有識者理事就任
矢倉 大夢(やくら ひろむ)
2011年 国の未踏IT人材発掘・育成事業に当時最年少で採択
2014年 株式会社チームボックスに参画し、CTOに就任
2020年 GoogleよりAIの応用研究に関してPhDフェローに選出
2021年 MicrosoftよりAIの応用研究に関してPhDフェローに選出
2024年 ドイツ・マックスプランク人間開発研究所の研究員に就任し、 AI技術が人間全体の創作活動に与える影響についての研究に従事
小俣 泰明(おまた たいめい)
2009年 クルーズ株式会社に参画、同年6月に取締役に就任
2010年 技術統括担当執行役員に就任。CTOとして大規模WEBサービスの開発に携わる
2012年 クルーズ社を退任し、ITベンチャー企業を創業。代表として3年で180名規模の会社にする
2016年 アルサーガパートナーズ株式会社を設立。 株式会社エボラブルアジア社外取締役に就任
2024年 一社Generative AI Japan 理事就任
セッション1:各分野の生成AI活用の最新トレンド
鈴木 寛教授 :行政における生成AIレギュレーション
デジタル庁では、生成AIの進歩や普及を踏まえた対応に重点を置いた政策を進めており、各国のレギュレーションは大きく異なっています。例えば、ヨーロッパではかなり慎重な姿勢を見せており、特にフランスではChatGPTの利用が禁止されています。一方、アメリカでは1億4000万ドルを投じて、気候や農業などの分野でAIの活用を進めているなど、生成AIに対する向き合い方に違いが出始めています。
日本でもこれまで生成AIに対するレギュレーションは複雑でしたが、2024年4月に総務省と経済産業省が協力しAI事業者ガイドラインを策定しました。AIの進歩の速度に対して法律で対応するのは難しいため、日本ではガイドライン方式が採用されました。この方式により、技術革新や世の中の状況に応じて、柔軟に対応していくことが可能となります。
これまでは、官僚が考えた政策が上意下達で一方的に伝えられる形でした。しかし、これからは政府だけでなく、民間企業、市民団体、一般消費者、実務家を含む100名ほどが常に連携し意見交換を行い、パブリックコメントを取り入れながら議論し、その結果を柔軟に反映しながらガバナンスが形成されていくことになります。
鈴木寛教授の専門の教育分野において、生成AIガイドラインが文部科学省によって発表されました。すでに情報モラル教育や英会話などでの活用が進んでいます。特に重要なのは、校務情報を生成AIを使ってどのように効率化していくのかという点です。生成AIは教員の働き方改革にプラスの影響を与えてくれています。今年は生成AIの校務での活用は大いに進歩すると考えられます。
矢倉 大夢氏:生成AIが我々の思考や行動をどう変えるのか
矢倉大夢氏は、現在ドイツでAIの応用技術開発とその社会実装を専門として、以下のような技術開発・研究を行っています。
・新生児蘇生の教育支援AI:新生児が生まれた際に必要な対応のを医療者教育として提供する
・初心者向け作曲支援AI:テーマを与えるだけで好きな楽曲を生成AIが作成する
AI技術は、研究者目線でみても想定を超えるスピードで進化しています。現在すでにある技術として以下のようなものが挙げられます。
・画像生成AI:テーマを与えるだけでポスター(画像)を無料で作成できる。
・動画生成AI:例えば、「テーブルに座って箸で麺を食べる中国人男性の動画をつくってください」と指示を与えると、どこかのスタジオで撮影したかのような動画が作成できる。
・通訳AI:
例1)自分の話したことを様々な言語に翻訳し、自分の声で多国語を話しているような動画を作成できる。
例2)Facebook(Meta)では文字がない言語でさえ翻訳する技術を開発。例でいうと、Hokkienという台湾の山奥の一部でしか使われてない(文字がない)言語でさえ翻訳できる。
現状では、映像の歪みなどの特徴を確認することで、生成AIで作られたコンテンツである可能性を識別することができますが、これから技術はどんどん進化していくでしょう。一方で、法律による規制で技術進化に追いつくのは限界が生じてくるかもしれません。このような状況において、技術をどのように活用するかを考えることが重要な時代となっています。
このような目を見張るほどのAIの進化の果てに、人類の想像力はどうなってしまうのでしょうか?
過去の歴史からみると、写真や映画のような「複製技術」が登場した際、絵画の世界が終わるのではないかと懸念されました。しかし、それに対して新しい絵の描き方が生まれました。複製技術が当たり前になったことで、アートにどう面白さを持たせるかという視点が生まれたのです。新しい技術の登場によって、新たなクリエイティビティが生まれることが示された一例です。
実際に囲碁の世界では、同様の現象がすでに起きています。2016年に囲碁AI「AlphaGo」が世界王者を破り話題となった際には、AIが棋界だけでなく世界をも滅ぼすのではないかとまで言われました。しかし今、棋界では面白いことが起こっています。
AlphaGo登場から7年経った現在、棋士の93%が練習にAIを利用しています。その結果、序盤の打ち手は似てくるものの、後半ではこれまでに見たことのないような斬新な打ち手が増え、歴史上で最も熱い時代になっているといわれています。
AIが世界の新たな社会のOS(基盤)となり、その上でどのようなアプリ(使い方)を生み出せるかが重要な時代になっています。リスクを認識しながらも技術をうまく取り入れることで、世界はさらに変化し続け、私たちの社会のあり方も変わっていくのではないかと考えています。
小俣泰明 :生成AI時代の日本の戦い方
国内の企業における生成AIの導入状況は、今後1年以内に本格的な導入を検討している企業が58%に達しており、生成AIへの関心が高まっていることが伺えます。一般的な利活用状況は、2023年現在では87%と非常に高い一方で、実際に業務や事業で生成AIを活用できている企業は18%にとどまっています。
2023年は、生成AIの価値を試す「試用」の段階でしたが、2024年は人やモノの機能や能力を十分に活かす「活用」フェーズに進んでいます。
これまでは、プログラミング言語を使って指示を出しその結果を得るという形で、専門知識を持つ人だけがデータやAIを活用できる状況でした。しかし、今後は生成AIがエージェントのような役割を果たし、自然言語を理解して、人の指示をAIやシステムに伝えることで、データやシステムとの対話を補助する世界が訪れます。これにより、誰もが「言葉」を基に価値や洞察を抽出できるようになるのです。
さらに、テキストだけでなく音声や表情などの指示をマルチモーダル化することにより、生成AIは曖昧かつ複雑な処理も可能になります。このマルチモーダル化したアプリケーションは、あらゆる業種・業界で活用ができます。
たとえば、アルサーガパートナーズの開発事例として、採用業務に生成AIを活用した面接ツールがあります。このツールでは、生成AIと音声を使って面接を行い、会話データの結果から総合評価を行います。AIが様々な情報から客観的に適正を判断をするので、書類選考で落ちてしまう人の中にも可能性ある人材を見つけ出すことができます。
他にも、AIに学習させることによって、エンジニアのスキルチェックや1次面接、2次面接の対応なども可能となり、採用担当者の工数を大幅に削減することができます。
生成AIにより仕事がなくなるのではないかと心配する向きもありますが、逆に人間にできて生成AIにできないことはなんでしょうか?それは「決断」「判断」「行動」ではないでしょうか。生成AIは「決断」や「判断」を行う仕組みにはなっておらず、最終的に判断を下すのは人間である必要があります。そのため、これからの世の中は、決断や判断ができる人の価値が非常に高まるでしょう。日々しっかりとした決断や判断を意識しながら生活することで、社会の変化に対応できる自身の価値を高めることができると思います。
生成AIは私たちの仕事を奪う存在ではなく、一人ひとりのアシスタントとして共存するパートナーだと考えています。その可能性を恐れず受け入れ、生成AIと共に新たな価値を創造することが重要です。国内での生成AI利用を活発化し、ITリテラシーを高めることで、さらなる成長と発展を遂げることができるでしょう。アルサーガパートナーズは、日本が活気づくよう邁進し、AIと共に新しい未来を切り開いていきます。
セッション2:生成AIはどう世の中を変えるのか〜全員参加の妄想タイム〜
セッション2では、参加者の皆様からの質問(妄想)に登壇者が答える、Q&A形式で生成AIに関しての見解や事例をお答えしました。内容を一部抜粋してお伝えします。
Q:調査報道の効率化やITスキルのない編集部のDX化にうまく活用したい
A:
鈴木氏)非常に有用だと思います。私は研究者なので時折論文を執筆するのですが、その際には材料の収集や裏付け、信頼性が非常に重要です。生成AIを活用することで、膨大な情報を瞬時に収集する作業が可能になります。さらに良い点は、信頼できるソースから情報を引用し、そのソース元も提示してくれるところで。その情報をこのような編集方針でまとめてほしいと指示をすると、ほぼ完成に近い調査報告書ができてしまいます。さらに、関連する図表まで提供してくれるんです。生成AIによって知的ワークが飛躍的に効率化されるのは大きなメリットです。
矢倉氏)すずかん先生のおっしゃる通りで、それに加えて生成AIは言語の壁を超える点でも非常に適していると思います。英語のニュースの細かい情報をカバーするのは大変ですが、生成AIが自動で翻訳し、さらに要約もしてくれるのは大きな使い道の可能性かと思います。
DXにおいては、仕組みやソフトウェアの活用も重要ですが、それ以上に新しい技術に挑戦する姿勢も大事だと思っています。生成AIを使って何が得意で何が不得意なのか、そして人間がやるべき判断は何なのかを試してみてほしいですね。
小俣氏)ChatGPTを使っている方は多いと思いますが、ChatGPTにはファイルをアップロードする機能があります。例えば、英語で書かれた分析資料やレポートのPDFを生成AIにアップロードし、「このPDFとこのPDFを掛け合わせてどのようなことが言えるか」を指示すると、精度の高い文章を生成してくれます。この機能を活用することで、かなりの作業効率化が期待できるので、積極的に試してみる価値があると思います。
他にも「ユーザーが気づかないうちに裏で生成AIを使用するような、生成AIが当たり前になる使いやすい製品が登場してほしい」という要望について、実際にそのような状況が既に実現していることをお話いただき、さまざまな場面での事例を紹介していただきました。
また、「生成AIの時代における教育のあり方を日本でどのように活性化させるか」についてもご質問をいただき、教員の業務の質を高める施策が動き始めているなど、専門家である鈴木寛教授を筆頭に貴重なお話をいただき、大変有意義な時間となりました。
■アルサーガパートナーズ株式会社 について
アルサーガパートナーズは、成長し続ける流行の発信地“渋谷”に拠点を置く総合ファームです。「日本のDXを世界で誇れる産業へ」をビジョンに掲げ、DXサービスをワンストップで提供するため、コンサルティングからシステム開発、保守・運用までの体制を整えています。「最高品質を最速で」をスローガンに掲げ、お客さまに寄り添いながらビジネスの成功をより確実なものへと導きます。
本社 :東京都渋谷区桜丘町1番1号 渋谷サクラステージSHIBUYAタワー18階
熊本支社 :熊本県熊本市南区江越2丁目24-1
福岡支社 :福岡県福岡市中央区天神一丁目10番20号 天神ビジネスセンター7階
代表者 :代表取締役社長 CEO/CTO 小俣泰明
設立日 :2016年1月
資本金 :14億3,470万円(資本準備金等を含む)
従業員数 :469名(SES含む、2024年6月末時点)
事業内容 :ワンストップDXサービス事業
Web :https://www.arsaga.jp